すべての雑感

自分用の備忘録です

「この世界の片隅に」を観ました

忘れないうちに観に行こうと思っていってきた。

事前情報としてあったのは、能年玲奈(現のん)さんが主役の声をあてている、ということと、太平洋戦争が絡むということと、すごく評判がいい、ということだけであった。

 

 

<お話的には>

何というか一言でいうと、すごく優しい映画だった。劇的すぎない、というとちょっと伝わりにくいだろうか。*1

やはり戦争が絡むと、そういう教育を受けてきたので、いっちょまえに、「戦争は常軌を逸している。戦争は悲しい。戦争はしてはいけないと思った(小並感)」みたいなのがいつも自分の中で主張がとまらず、それを後で恥じるんだけども*2、今回は、それよりも全部地続きの生活の中に戦争があって、それが終わってまた生活が続いていくんだ/新しい生活が始まっていくんだ、という実感のこもった安心感と感傷があった。

その意識が強くなったのは、すずさん(主人公)も言っていたが、いつの間にこんなことになってしまったのだろうか(知らないうちに戦争が激化していった)という意識が、すずさんの生活を追体験する私にもあったからだろう。

本当にいつの間にか食事も配給制になり、空襲は日常に組み込まれ、人々はやせ細っていった。

顔見知りが戦争にいき、そして死んだ。行かなくても死んだ。*3

すずさんも大切なものをたくさん失った。

しかしその中にも笑顔はあったし、これからもその続きとして生活が続いていくのだ。

それがある種希望みたいなものになったと思う。

生きている限り生きなきゃいけないんだ・・・と思うのだ。

 

また、これはすずさん自体が居場所を求める話だったのかな、とも少し。元々すずさん自体は割とぼーっとしていて自分がない、というところからの出発だったし、嫁入りとかもある種強制じみていたところはあった*4。最終的には自分で自分の居場所を選べた、というところが大きいと感じた。また、自分自身が他の人の居場所になる、というところも。*5

すずさんの怒るシーンはターニングポイントでもあった。

1.水原と納屋の二階で二人で過ごすところ

2.周作に感情をぶつけるところ

3.終戦

 

お話し的に割とさらっと流れていくので、下手すると気がつかない人がいるのではないか、勘違いするのでは、という場面もあった*6

例えばすずさんの妊娠発覚?→朝飯が二人前→夜飯が一人前、というのはもしかして子供ができない体質なのでは?*7とか、終わりの方の人さらいのおじさんとか・・・*8

 

 

 

<演出とか画的には>

タッチが柔らかくて、表情がかわいいというか。受け入れやすかった。こういうところも良かったな。コトリンゴさんの曲が合う。

エンドロールはまたちょっと違ったというか、過去と現実の邂逅という、目に見えない意識下での出会い、という優しさがあった*9

画的に面白いというか目で楽しむ描写があった。幼少時代の水原に描いてやった絵のところとか、水原の乗っていた青葉がうさぎとともに飛ぶところとか。水原ばっかだな・・・・*10

あとはすずさんの右手がなくなって、布団の上での独白(というか脳内の反響)のところで「よかった」というのがわからん→~~した右手が…~~した右手が…というのが左スピーカ、右スピーカ、映画自体の音響から流れてきて頭がそれで埋め尽くされたところは凄かった。心的圧力で押しつぶされるかと思った。あの絶望、どうしようもない。*11

 

こうして書いていくと意外と掻き消えていて少し悲しい。完全に自分用感想なのに、あとから読んでも若干わけわかんなさそう。とりあえず漫画版とか関連書籍揃えてBDとかほしい。うむむ時間が足りない・・・。

 

追記1/24

のんさんの演技について書いていなかった。

彼女の演技はとても良かった。実際入り込んでいけた一因として彼女の演技がある。パッと聴くとのんびりさ、天然さみたいな味があるのだが、怒りのシーン、泣きのシーンなどその感情が発露するシーンにおいてその平常のシーンとのギャップに驚かされるのだ(夫もそう思ったらしいことが描写からわかる)

平凡な言い方で恐れ入るが、それこそ等身大の人間としてのすずさんがそこにいれたのは、のんさんのおかげなのかもしれない。この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

 

*1:境遇的には劇的だし、かなり悲惨である。キツイところもあったが、こちらへの主張、訴えかけが劇的すぎない、つまりは過度ではなかった

*2:だって全部同じ感想を持つなら別にひとつだけ適当なのをみればいいじゃんみたいな思いがある。そういうことで自分でその作品を侮辱してしまった感じがして嫌だ。

*3:海軍で同郷の水原哲、目の前で亡くなった姪の晴美、幼少の頃に出会い再会した遊郭の白木リン、すずの父母、そして妹の浦野すみも原爆症で将来的には・・・・

*4:夫の姉からもそういったことを言われる場面もあったなあ

*5:周作には居場所になってくれ、と言われたし、哲にも普通でいてくれ、と言われていた

*6:下手すると私も見落としているであろうが・・・

*7:ここは最後の養子にするみたいなところでようやく気がついた

*8:流石に水原とかキリ関連は大丈夫だろうが

*9:二人ともあとから気がついてそうだ、なんて

*10:やっぱ水原のこと好きだったよな・・・・すずさん。遅い、とも言っていたし。

*11:ゾッとしたところはここと妹が原爆症の痣があったところ、水原が訪ねてきて死に損なった、俺は普通の道から外れてしまったというところ、遊郭が気がつくと燃えていたところなど・・・